榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

飲み友達の女性三人組の赤裸々な会話に、思わず引きずり込まれてしまいました・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2101)】

【読書クラブ 本好きですか? 2021年1月13日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2101)

ジョウビタキの雄(写真1~7)をバッチリ、カメラに収めることができました。ツグミ(写真8)、コガモの雄(写真9)に出会いました。あちこちで、ウメ(写真10~14)が白い花、赤い花を咲かせ始めています。因みに、本日の歩数は13,078でした。

閑話休題、『fishy』(金原ひとみ著、朝日新聞出版)は、一言で言うと、生臭い小説です。

作家志望のライター、美玖28歳。女性誌の編集者、弓子37歳。インテリアデザイナー、ユリ32歳――この飲み友達三人それぞれに、大変な問題が襲いかかってきます。

弓子の場合――。
「離婚して欲しいと思ってると夫が言った瞬間、(夫の)隣に座る(夫の愛人の)女が心の中で諸手を挙げて『やったー取ったどー!』と歓声を上げる姿が見えた。他に好きな人ができたから離婚したいと切り出されたのは一ヶ月前。したいならしてもいいけど、子供たちのこともあるしきちんと反し合いたい。私の言葉にホッとした様子の夫は、じゃあ一度ゆっくり子供のいないところで話し合おうと言ったけれど、私が校了で時間が取れなくなったため保留になってしまった。校了を終え再び離婚の話を振られた時、自誌の売れ行きと販売部が下げてきた部数のことで虫の居所が悪かった私は、別れたいですああいいですよってオートマで判子押すとでも思ってんの? 女連れて来いよと怒鳴り散らした。何度慎重に思い返しても、夫に対して怒鳴り散らしたのはそれが初めてだったように思う。会社ではそれなりに仕事もでき人の上に立ち可能な限りマウントやセクハラには毅然と、時と場合によっては激情的に対応してきたけれど、私は家ではそれなりに従順で古風なタイプの妻だったのかもしれないと、その時初めて思った。あの時の言葉がこうして、三人が向き合うこの空間を作った訳だけれど、あの時完全に我を忘れてブチギレていた故の言葉であって、今は全くもってこの女を張り倒すような気分ではない」。

美玖の場合――。
「『(不倫相手の彼と)一週間擬似夫婦みたいなことして楽しんだわけだ』。弓子に言われて言葉に詰まっていると、お前は港か、とユリがバカにしたように笑った。『楽しかったのは最初の二、三日だけで、あとは彼が帰った後のことを考えて、一人で家にいる時間はほとんど泣いてました』。・・・『この半年彼のことばっかり考えてた。他の男と寝ても彼のこと考えてる。そんな彼が私のところに来たいって言ってくれたんだよ。そんなの喜んで受け入れて苦しみながら送り出すしかない』。・・・不倫されている弓子の目に、不倫している私はどう映るんだろう。・・・『実際恋愛が始まる時にこの人と恋愛したいとかしたくないとか考える余裕なんてなくない? 向こうがヤリたい、こっちもヤリたい、そうなったら防波堤が崩れるだけでしょ。まあその防波堤が崩れそで崩れない感じも燃えるけど最終的には崩れるでしょ。結果的に辛すぎて別れることはあるだろうけど、予防的にそういう男を拝受することはないよ』」。

ユリの場合――。
「(付き合い始めて二ヶ月の、かなり年下の)彼は私とは全く違う考え方、生き方をしている男であり、だからこそ私はそこに惹かれ付き合い始めたのだろう。それでも、彼といる時間が長くなればなるほど、そこに安住することはできても、そこから気持ちのいいセックスと楽しい時間以外の何かを得ることはないだろうといううっすらとした見通しを持つようになっていた。でも気持ちのいいセックスと楽しい時間以外、何を男に求めることができるだろう。魂の繋がり、何でも話し理解し合える関係、恋人であり親友でもある唯一無二の存在、そんなのオカルティックだし偽善的だし、この世の薄ら寒さに耐えられない人々の幻想でしかない。性器を舐めていた壮太が顔を上げ、上になってよと嬉しそうに言う。その外連味のない彼の態度に常に心を打たれる。何ともナチュラルに育った男だ。彼の顔面を跨いで四つん這いになり、彼の性器を濡らしていく。いくつかの動きを一定間隔で変更し、硬くなりきったところで手と口の動きを早めていく。壮太の声が上がり始め、指を二本に増やされた私も声を上げる。出していいよと言われて呆気なく潮を吹くと、彼の満足げな様子が空気で伝わってくる。入れていい? と問われいいよと答えると、このまま入れようと言われ背面騎乗で挿入する」。

三人とも、この段階ではとても収まらず、さらにややこしい展開が待ち構えています。

美玖と弓子とユリの赤裸々な会話に自分も参加しているような錯覚に囚われてしまいました。それにしても、女性というのは誰でも、こんなに会話も行動も開けっ広げなのでしょうか。