がんと告知された40歳の独身OLが、ホストと契約結婚したら・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2350)】
ナタマメ(写真1、2)、ヘチマ(写真3)が花と実を付けています。カキ(写真4)、ウンシュウミカン(写真5)、ヒメリンゴ(イヌリンゴ。写真6)、カラスウリ(写真7)が実を付けています。セイヨウタンポポ(写真8)の種子(綿毛、冠毛)は、よく見ると、幾何学的な美しさを有しています。オオケタデ(写真9、10)、コスモス(写真11、12)が咲いています。ホウキギ(ホウキグサ、コキア。写真13)の茎葉がほんの少し赤く色づいてきました。
閑話休題、『余命一年、男をかう』(吉川トリコ著、講談社)は、がんと告知された40歳の独身OLが、シュガーピンク色の髪をしたホストを買うという物語です。
周囲から、分厚い眼鏡をかけ、「貧乏くさい節約飯を持参する行き遅れのかわいそうな女子事務員」と見做されている片倉唯(ゆい)は、「おしゃれもせず、恋もせず、旅行をせず、推しに課金もせず、友人とおいしいものを食べたりもせず、日々変動する(蓄財の)数字をスマホで眺めてはにやにやしている」生活を送っていました。
ところが、市の無料のがん検診で医師から、余命1年の子宮頸がんと告知されてしまいます。会計の順番を待っている時、シュガーピンク色の髪をしたホスト風の青年から金を無心され、余命1年なんだからと、クレジットカードで下ろした723,800円を渡します。そして、唯のほうからホテルに行こうと誘います。「はじめてがん告知を受けた。はじめて医者に詰め寄った。はじめて余命宣告を受けた(というより、半ば無理やり引き出した)。はじめて人に金を貸した。はじめてタクシーの料金を自分で払った。はじめて男の人と風呂に入った。はじめて男の人を買った。四十年生きてきて、ここまではじめて尽くしの一日があっただろうか。人間死ぬ気になればなんでもできる――とはよく言ったものだ。うまくすれば一年、多少延びたとしても二、三年で死ぬという言質を医者から取れたら、人はいくらでも大胆になれる」。
唯は久しぶりに瀬名吉高(ホストの本名)に会いに行き、スマホの資産管理アプリを開き、瀬名に画面を見せます。「『ぜんぶあげる』。私は、いままさに人生でいちばん大きな衝動買いをしようとしていた。バンジージャンプどころじゃない。地上五千メートルからのスカイダイビングだ。『だから、結婚しよう』。長いあいだ女は王子様を待ちわびるばかりで、うやうやしくガラスの靴を差し出すのはいつだって男の役目だった。だけどそろそろ男と女をひっくりかえしたってよくないか。これまで私はなんて大きなかんちがいをしていたんだろう。シンデレラは私ではなく、瀬名のほうだったのだ」。
「『え?』と訊き返したら、『結婚ってそんなもんじゃねえだろ』と今度は顔をあげてはっきりと声にした。『じゃあ、瀬名の思う結婚ってどんな?』。『それは・・・』。瀬名にしてはめずらしく一瞬、言葉を詰まらせた。『なんつーかもっとこう、ずっといっしょにいたい的な? あと、守ってあげたい、とか?』。思わず私は噴き出してしまった。ホストのくせに、髪をピンクにしてるくせに、ときどきびっくりするぐらい保守的なことを言う」。
結婚した二人が、その後、どうなったかは、ヒ・ミ・ツ。