俳句を仲立ちとした作者と著者との公開往復書簡集・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2726)】
幸運にも、エゾビタキ(写真1~5)に出会えました。写真6は、敬愛するバード・ウォッチャーが私の隣で撮影したエゾビタキだが、撮影技術のあまりの差に愕然。コゲラ(写真7~9)、エナガ(写真10~13)、アオマツムシの雌(写真14)をカメラに収めました。ジュウガツザクラ(写真15)、コブクザクラ(写真16)が咲いています。
閑話休題、テレビの俳句番組で講師が添削した句が元の句よりよくなったとは思えないケースが時々あります。そこで、俳句を仲立ちとした作者と著者との公開往復書簡集『俳句劇的添削術』(井上弘美著、角川新書)を手にしたのだが、納得しまくりでした。
●固有名詞を下五に
成句=渡月橋人影のなき春爛漫➡添削=爛漫の春や人なき渡月橋
●感動を捉える
成句=野馬追や先頭駆ける女武者➡添削=野馬追や先頭赤き少女武者
●風景に広がりをもたす
成句=暮れそむる谷戸に稲架(はざ)組む槌の音➡添削=稲架組めば谷戸暮れてゆく槌の音
●動詞を印象的に
成句=眼(め)をとぢて野鼠死せり冬銀河➡添削=野鼠の瞑(めつむ)る眼(まなこ)冬銀河
●主体を明瞭に
成句=二ン月の風に乗せ来よははのこゑ➡添削=母の声二月の風に乗りて来よ
●言葉を減らす
成句=地層透く沢の流れや山椿➡添削=沢水の地層を透かす山椿
●余韻を残す
成句=如月の解きて薄き着物かな➡添削=如月や解きたるままの衣(きぬ)の嵩
●発想の転換
成句=夜の秋旅の終はりの爪を切る➡添削=仏桑花(ぶっそうげ)旅の終はりの爪を切る
●対象の特徴を捉える
成句=翻へる沢鵟(ちゅうひ)一羽の塒(ねぐら)入り➡添削=塒入りするとき沢鵟ひるがへる
●立体感を出す
成句=花衣母の背丈に立ち上がり➡添削=立ち上がる母の背丈の花衣
●リフレーンを生かす
成句=降る音も踏む音もなく春落葉➡添削=春落葉降れど踏めども音のなく
●韻律を生かす
成句=しづけさや壁を焦がせる薔薇の影➡添削=まひるまの壁を焦がせり薔薇の影
●比喩を生かす
成句=緑陰に生きよと熱き喉仏➡添削=満身に生きよと充たす新樹光
●文語表現を生かす
成句=初夏の山気満ちたる一湖(いっこ)かな➡添削=初夏の山気満たさむ一湖かな
うーむ、勉強になりました!