榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

唐の太宗、明の永楽帝、明の王陽明は「悪党」か・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2797)】

【読書クラブ 本好きですか? 2022年12月13日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2797)

クリスマスが近づいてきましたね。

閑話休題、『悪党たちの中華帝国』(岡本隆司著、新潮選書)で、とりわけ興味深いのは、唐の太宗、明の永楽帝、明の王陽明――の3人です。

●唐の第2代皇帝・太宗(李世民)
「李世民兄弟の相剋はしょせん、次の帝位をめぐる権力争いにほかならない。機先を制して実力行使のクーデタに訴え、兄を血祭りにあげた弟(李世民)の勝利といいながら、およそ後味の悪い結果ではあった」。

「太宗についてさまざまなエピソードが残っているのは、そんな歴史・記録を十分に意識して演技した結果なのであり、演技であれば嘘つきである。『貞観政要』もその所産の一つ、正直者の(隋の)煬帝の失敗を徹底的に利用して貶めることで、自身が明君になりおおせた。本書の『悪党』として第一に掲げたゆえんである」。今後は、帝王学の名著として知られる『貞観政要』に対する見方を変えねばならないようです。

●明の第3代皇帝・永楽帝(朱棣)
明を建国した朱元璋の後を継いだ孫の建文帝を、朱元璋の息子・朱棣がクーデタで追い落とし、帝位を簒奪してしまいます。

「(永楽帝の即位に抵抗した)方孝孺は処刑、その親族・門下・類縁者も連座して皆殺しにされた。方孝孺一人にとどまらない。(建文帝の)南京政権の有力者は軒並み建文帝に殉じ」たのです。

●明の陽明学の創始者・王陽明(王守仁)
「陽明学の創始者として著名な王守仁は、何より思想家とみられる。しかし官僚としても、有能だった。とりわけ三たび反乱を鎮圧した事績は史上に明らかで・・・文化と政治が分岐してゆく明代で、思想でも治績でも傑出した士大夫・官僚は、むしろ反時代的で、型破りな存在だといってよい」。偉大な思想家・王陽明が軍略に秀でた有能な官僚だったということは、本書で初めて知りました。

「王守仁も当時通例の知識人と同じく、科挙の受験勉強もしたし、必然的に朱子学も学んだ。それどころではない。『聖人学んで至る可し』と教わり信じたかれは、朱子学を専心実践している。その結果、どうしても違和感がぬぐえず、その一点を愚直に、徹底的につきつめて朱子学を否定するにいたった」。