榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

消防団の男が消防団詰め所に火をつけた理由とは・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3007)】

【読書クラブ 本好きですか? 2023年7月12日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3007)

さまざまなキノコが生えています。

閑話休題、短篇集『鍵のない夢を見る』(辻村深月著、文春文庫)に収められている『石蕗(つわぶき)南地区の放火』は、地方都市の財団法人町村公共相互共済地方支部に勤務する主人公の笙子(36歳)が、実家のごく近くで起こった放火事件は、かつて自分にしつこくアプローチしてきた消防団の男が、不自然な形でなく自分と再会するために仕組んだものではないか、と疑う物語です。いわば、八百屋お七の白けた現代男版ではないかと疑ったのです。果たして、その真相は・・・。

本書に収められている短篇の登場人物たちは、いずれも、少しピントがずれています。自分も含め、この世の中は、こういう少しピントのずれた人間たちで成り立っていることを、改めて思い知らされました。おー、怖っ!