榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

魔女裁判は中世でなく、近世の出来事だと、あなたは知っていましたか・・・【情熱的読書人間のないしょ話(3704)】

【読書の森 2025年5月18日号】 情熱的読書人間のないしょ話(3704)

オオキンケイギク(写真1、2)、シーラ・ペルヴィアナ(写真3)、シランとシロバナシラン(写真4~6)、ムラサキツユクサ(写真7)、ユウゲショウ(写真8)、ユウゲショウの白花変種(写真9)、アカツメクサ(別名:ムラサキツメクサ。写真10)が咲いています。ウメ(写真11)が実を付けています。

閑話休題、『史料と旅する中世ヨーロッパ』(図師宣忠・中村敦子・西岡健司編著、ミネルヴァ書房)には、えっ、本当なの?と聞き返したくなることが書かれています。

例えば、高校教科書や大学生向け概説書などでは、●中世ヨーロッパの王の王権は強かった、●魔女裁判は中世に盛んに行われた、●中世ヨーロッパの農民は領主に抑圧されていた――とされているが、それは正しくないというのです。

信頼できる史料を読み解くと、以下のような事実が明らかになるというのです。

●中世ヨーロッパの王は、何もせずとも強い権力を持ち自分の意のままに命令することができるような存在ではなかった。神の支援を求め、支配の正統性を主張し、また揉め事の調整役を務めつつ、有力貴族たちに配慮しながら判断を下していた。

●魔女裁判は、15世紀前半にちらほらとそれに類する事件が確認できなくもないが、一般的な現象となるのは漸く次の世紀になってからであり、最盛期は16世紀後半から17世紀前半にかけてである。つまり、魔女裁判は近世的な出来事なのである。

●中世ヨーロッパの農民は、主体的かつ積極的に自らの権利を領主に主張し、領主の合意を引き出していた。さまざまな危機の影響を受けて深刻な局面に直面したのは、農民よりもむしろ領主層のほうであり、領主にとって農民との良好な関係は自身の苦境を脱するために維持し続けなければならなかった。故に、領主は農民の要求に対して多くの譲歩をしたのである。

いささか専門的だが、歴史好きには見逃せない一冊です。